パルスオキシメータを手にすると、まず気になるのが「いつ測ればいいの?」という疑問です。
医師からは朝の起床時、昼、運動後、就寝前などの指示が出ることがあります。ただし、機器が手元にあると、つい何度も測りたくなるもの。
そこで本ページでは、日常生活の中で「いつ測る?」「どこまで気にする?」を整理します。
大切なのは ①症状優先 ②持続性 ③いつもの値との比較。まずは測り方の基本をこちらで確認してください → 正しい測定のしかた。

Q13. 散歩・運動・入浴・トイレ・食事・着替え中も測定は必要?
結論::目的は「ふだんと違う変化」に気づくこと。常に測り続ける必要はなく、前・最中(可能なら)・直後のどこかで落ち着いたタイミングで記録を。運動中は誤差が増えるため、直後〜1〜2分後に測るのが現実的です。
場面別のコツ
- 散歩・軽い運動:歩きながらの測定はブレやすいので直後に着席して測定。
脈拍が落ち着くまで20〜30秒待ち→同じ値を2回確認(正しい測定のしかた)。 - やや強い運動:運動直後は一時的に低めに出ることがあります。1〜2分くらい休憩してから測定。
- 入浴:機器の防水ではないものが多く浴室内測定は不可。入浴後は末梢血流が変わりやすいので、体を拭いて温まった状態で(手指の水分を拭き、30分以内を避けて落ち着いてから)。
- トイレ:いきみ・息止めで数値が揺れます。用足し後に着席して測定。
- 食事:咀嚼中は動きの影響でブレ。食前・食後の安静時に測定。
- 着替え:動作中は誤差が増えるため、着替え後に手指を温めて測定。
運動負荷について(HOTの方へ)
在宅酸素療法(HOT)では、散歩・入浴・トイレ・食事・着替えなどの日常動作もすべて運動負荷にあたります。これらの動作中や直後はSpO2が一時的に下がることがあります。主治医から指示された酸素流量の範囲で調整し、自己判断での大幅な増減は避けてください(詳しくは『在宅酸素の基礎知識』参照)。
あわせて、息苦しさや顔色、脈拍の変化も確認し、休憩(休息→再開)を取り入れながら無理のない範囲で行いましょう。
Q14. 飛行機の中で測定した方がいいですか?
目安としては有用です。機内は気圧を少し下げるため、健康な方でもSpO2が数%下がることがあります。
持病がある方は、主治医から測定・酸素の指示が出る場合があります。
- いつ測る?:離陸後しばらくして高度が安定した安静座位で、20〜30秒待って2回確認。揺れや会話中は誤差が増えます。
- 数字の受け止め:通常は大きな変化はありませんが、与圧された機内でも、一時的に低下する場合もあります。息苦しさ・胸痛・めまい・もうろうとするなどの症状がでたら、すぐに客室乗務員へ相談してください。
- 機内での注意:手指を温める/爪のマニキュア・強い光を避ける/Bluetooth等は指示に従う/予備電池を携行。
在宅酸素療法(HOT)をご利用の方へ:搭乗前に主治医と酸素流量の調整方針を確認し、必要時は航空会社への事前連絡・申請を行ってください(機内での酸素機器利用には各社の規定があります)。また、機内の救急用備品として パルスオキシメータ(SpO₂測定器)やAED が用意されています。機材や路線により搭載品は異なるため、体調不良時は客室乗務員にお声がけください。(詳しくは『在宅酸素の基礎知識』参照)。
Q15. 登山や高所旅行で携帯は必要?
携帯を推奨します。高所では誰でもSpO2が低めに出やすく、「ふだんとの違い」や「下がり続けていないか」を確認するのに役立ちます。
- 測るタイミング:朝の安静時/行動直後(1〜2分休憩後)/就寝前。寒冷で指先が冷えると誤差↑のため、手を温めてから。
- 見るポイント:SpO2の持続的低下+症状(頭痛・倦怠感・息苦しさなど)。
- 症状が強い/改善しない場合は無理をせず下降・休息を検討。
- 準備:予備電池/防水ケース(雨・汗対策)/正しい測定のしかたの再確認。
持病のある方は、主治医の事前指示(携帯酸素や高度順応計画など)を優先。
※山中では#7119等の通話・電波が届かないことがあります。
同行者・下山計画・連絡手段を事前に共有。
関連: 正しい測定のしかた / 数値の見方(目安表) / Q6:数値が揺れる時 / Q7:影響するもの
参考:日本呼吸器学会「パルスオキシメータ ハンドブック(一般向け)」
※本ページは一般向けの解説です。診断・治療、酸素投与や設定の変更は必ず医療機関・主治医の指示に従ってください。症状が強い・急に悪化した場合は119番へ。
投稿者名
Noguchi Hiroyuki 臨床工学技士
